たとえ、この恋が罪だとしても
 こんなふうに思うようになったのは、あの撮影の日がきっかけだった。

 あの時のスタッフたちの姿、自分の仕事にプライドを持って生き生きと働く姿が、ずっと頭から離れなかった。

 そして、自分も本当にやりたい仕事をしたいと強く願うようになった。

「ねえ、せんせえは? すきな子、いないの?」
 はぐらかしたと思っていたのに、このみちゃんはどうしても答えが聞きたいらしい。

 彼女を抱きあげて膝に乗せ、甘ったるい汗の臭いがする髪の毛をなでながら答えた。

「うん。いるよ。とっても好きなひとが」
「じゃあ、けっこんする?」
「ううん」

「なんでぇ?」
 このみちゃんはくりくりした目を大きく見開いて、わたしを見上げた。

「もう、会えないんだ。遠くにいるの」
「しんじゃったの?」

 わたしは、思わずこのみちゃんを抱きしめていた。
< 156 / 182 >

この作品をシェア

pagetop