たとえ、この恋が罪だとしても
 見るのは俊一さんの夢だけじゃない。
 安西さんの夢もひんぱんに見る。
 
 彼の評判はマスコミやネットを通して伝わってきていた。

 以前に増して、引っ張りだこの人気らしい。
 あれ以来、グラビアよりもファッション誌の仕事が増えているようだ。
 
 たまに雑誌で彼の名前を目にすると、心が疼く。

 いや、雑誌どころか、この春、カメラのCMにも出演していた。

 その美しい容姿も話題になり、アイドルのように熱狂的なファンもいるらしい。
 
 そう。どう考えても、わたしと釣り合うひとじゃない。

 あの1か月半の出来事は、幻だったんだ。
 そう思うほうが、よっぽどリアルだ。

 安西さんがわたしのことなんか覚えているはずがない。

 彼は、わたしの夢なんて見ないんだろう。
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