たとえ、この恋が罪だとしても
「文乃先生、すみません。遅くなっちゃって」
「ママー」
 考えごとに耽っていたわたしの手を振りきって、このみちゃんはお母さんのもとに駆け寄った。
 
 
 帰り支度を終えたふたりを門の外まで見送った。
「ばいばーい」後ろに乗っているこのみちゃんが、二度、三度と振り返りながら手を振っている。
 自転車が角を曲がり、ふたりの姿は見えなくなった。


 東の空に、昇ったばかりの大きな月が明るく輝いている。
 思わず見とれてその場にとどまっていると、心はまた、思い出に浸りはじめた。
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