たとえ、この恋が罪だとしても
 久しぶりに3年前の思い出に耽っていたから、目を開けたまま夢を見ているのだろうか。

 でも間違いない。
 長めの髪を掻きあげながら、少し照れくさそうに、こっちを見て微笑んでいるのは。

 ただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

 とても信じられない。
 だいたい、わたしがここにいることを知っているはずないのに。

 いったい、どうして? 

 でも、こっちに向かって歩いてくるのは、たしかに安西さんだった。
 
 全身の力が抜けて、その場に座りこみそうになる。
「あ……やの」
 感極まった声で呼ばれて、気づいたときには、思い切り抱きしめられていた。

 懐かしい煙草の薫りが、時間をいっきに3年前に引き戻す。

「やっと……会えた」
「安西さん、どうして?」

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