たとえ、この恋が罪だとしても
 そのとき、保育所のなかから、もう一度、わたしを呼ぶ声が聞こえてきた。

 わたしは安西さんの胸を手で軽く押すと、小さな声でつぶやいた。

「ごめんなさい。行かなきゃ。もう閉めるところで」

「こっちこそ、ごめん。まだ仕事中だったよな。嬉しすぎて、つい……」
 ばつが悪そうに頭をかきながら、遠慮ぶかげな声でこう訊いてきた。

「えっと、じゃあさ、この辺で時間つぶせるとこ、ある? ゆっくり話がしたいんだけど」

「まだやることがあるので……少しお待たせしてもいいですか」
 
 わたしの答えを聞いて、安西さんは嬉しそうな顔で答えた。

「もちろん。いくらでも待つよ」
「それじゃ、この先にファミレスがあるので、そこで」
「わかった。じゃあ、あとで」
 
 安西さんは片手をあげて挨拶すると、車に乗り込んだ。

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