たとえ、この恋が罪だとしても
 混乱していた。
 頭のなかが嵐に見舞われたようだ。 
 暴風雨が吹き荒れている。

 嬉しくないはずがない。
 ずっとずっと焦がれていたひとが会いに来てくれたのだから。

 でも、人間、夢が突然叶ってしまうと、思考が停止してしまうらしい。
 夢が現実になったとたん、どうすればいいのかまったくわからなくなった。

 何を話せばいいのかさえ、思いつかない。

「あら、どうしたの? 狐につままれたような顔して」
所長先生にそう言われても、うまく返事ができなかった。
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