たとえ、この恋が罪だとしても
「本当にそんな力があったら、もっと早く会いに来てるって」
 
 じつはさ、と言って、安西さんは種明かしをはじめた。

「おれ、あれから毎年、あそこの教会のコンサートに行ってたんだよ。もしかしたら文乃に会えるんじゃないかって思って」

 安西さんの話はこうだ。

 合唱団の讃美歌コンサートは恒例の行事になって、あれから毎年12月の第2日曜日に開催されていた。

 もちろん、わたしもコンサートのことは知っていた。
 待子さんとは年賀状のやり取りを続けていたので、毎年ご案内をいただいていた。

 今年も待子さんからぜひ来て、とお誘いをいただき、行こうと思っていたけれど、当日になるとどうしても気乗りがせず、結局行けずじまいでおわった。

 行けば、また安西さんの思い出に捉われて、自分を失くしてしまいそうで怖かった。
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