たとえ、この恋が罪だとしても
 安西さんはコーヒーに手を伸ばす。

「この辺の保育所、六、七か所回ったよ。不審者と思われるしさ、大変だったんだぜ」

 こんな格好してるから当たり前か、と言ってから、カップに口をつけた。

「でも、探したかいがあった。こうして会えたから」
 それから、手にしていたリュックから半分にたたまれた紙を出して、わたしに手渡した。

「それ、待子さんから。お詫びの手紙って言ってたよ」
 
 ほんの数行の走り書きだった。

  文乃さん
  勝手に居場所を教えてしまって、ごめ  
  んなさいね。

  でも心から好きだと思える相手と出会え
  るのは奇跡なの。

  そんな機会を自分の手でみすみす潰してし
  まったら、神様がお怒りになりますよ。

  自分の気持ちに正直にね。

  もう意地を張らなくても大丈夫。
  あなたはもう充分、償っていますよ


 その手紙を読んで、凝り固まっていたわたしの心が不思議なほど、ほぐれていくのを感じた。
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