たとえ、この恋が罪だとしても
 けれど、探るように見つめる彼の瞳を見て、気がついた。
 わたしが突然姿を消したことが、どれほど安西さんの心を傷つけていたか。

 あのとき、自分は俊一さんへの罪悪感を少しでも薄れさせることしか、考えていなかった。

 安西さんの、わたしを想ってくれる気持ちを軽んじたつもりはまったくなかったけれど、結果的に彼の気持ちを踏みにじってしまった。

 結局、わたしは自分のことしか考えてなかった。

 ひどいことをした。

  安西さんの顔がまともに見られない。俯いたままで、わたしは言った。
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