たとえ、この恋が罪だとしても
エピローグ
 彼の部屋で、安西さんはありったけの情熱を注ぐかのようにわたしを抱いた。

 獣のようにわたしを貪る彼にこたえて、いつしか、わたしもあらぬ声をあげていた。
 
「まだ夢みたいだ。文乃とこうしているなんて」
「わたしも……同じこと、考えてました。今」

 情事の余韻に浸ってぼんやりしているわたしに安西さんがつぶやいた。

 彼の腕がわたしの身体の下に滑り込んできて、そのまま引き寄せられる。
 背後から抱きしめられて、肩口にそっとキスされる。

 こわれものを扱うように優しく。
 そうした態度のすべてがわたしを幸福の極みに連れて行ってくれた。

 あのときは、その幸福が怖かった。でも、今は違う。
 そのことが心の底から嬉しかった。
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