たとえ、この恋が罪だとしても
第1章 プロポーズされた日
〈side Ayano〉

「結婚してくれないか」
 
 週末。
 いつものように、ふたりで過ごしているときだった。
 食後のコーヒーを飲みながら、彼は唐突に告げた。

 わたしは藤沢文乃(あやの)
 25歳。
 大手メーカーに勤める会社員。

 この人、高柳俊一と付きあいはじめて、もうすぐ2年になる。

 奥手だったわたしの、はじめての恋人。
 新年会の帰り道、ふたりきりになったときに「きみが入社してきた日、一目惚れしたんだ」と告白されて。
 
 大学卒業後、親のつてで大手メーカーに就職し、営業部に配属された。
 俊一さんはわたしより4歳年上。
 頼れる先輩だった。

 一流企業勤務。高年収。性格は温厚。
 ちょっと堅物すぎるぐらい真面目。
 煙草は吸わない。お酒も適量。
 ルックスもずば抜けてるってわけではないけれど、まあ、いいほうだと思う。 
 
 つまり、結婚相手として申し分ない人。
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