たとえ、この恋が罪だとしても
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紗加とはじめて会ったのは、専門学校の友達と開催したグループ展の会場だった。
彼女はそのころ京橋の画廊でキュレーターをしていた。
紗加が画廊に現れたとき、おれが留守番役でひまを持て余していたときだった。
入ってきた瞬間、息を飲んだ。
同級生の女子たちとはくらべものにならない大人の色香に圧倒されてしまった。
目を離せず、無遠慮に見つめていると、彼女はまったく臆することなく嫣然(えんぜん)と微笑みながら「あなたの作品はどれ?」と尋ねてきた。
すこしかすれたハスキーなその声にもやられてしまった。
おれは当時付きあっていた子をありとあらゆる角度からクローズアップで撮った写真を出品していた。
「へえ、虫も殺さないような優男風情なのに、ここまで女の子の粗(あら)を暴けるのは才能ね。気に入ったわ」と言って、名刺にプライベートの携帯電話の番号を書くと、おれに手渡した。