たとえ、この恋が罪だとしても
「ありがとうございました」

 椅子から立ち上がると、店員の女の子が挨拶した。
 軽く会釈を返すと頬を赤らめた。

 バリスタ風の制服がよく似合っていてちょっといい感じだけど、モデルにするにはインパクトが足りないし、イメージにも合わない。
 
 さて、これからスタジオの近くをぶらついてモデルを物色するかな。
 幸い天気もいいし、今日みたいな日は女子たちが大挙してあの辺りを闊歩しているはずだ。
 
 そんなことを考えながら、駅に向かっていると、坂道の途中に小さな教会があった。
 入口の横に立て看板があって『クリスマスコンサート』と書いてある。

 もう、そんな時期だよな、とそのまま通り過ぎようとしたら、白いスモッグに赤いベレー帽をかぶった人に「どうぞ」と水色の紙を手渡された。

 手書き文字で〝讃美歌コンサート〟と書かれている。へたくそなサンタの絵とともに。

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