たとえ、この恋が罪だとしても
「お時間があればどうぞお入りください。もうすぐ始まりますから」と、か細い声で問われる。

 ごめん、忙しくて、と言おうとして顔を上げて、はにかんだ表情を浮かべている顔に目をとめた。

 あれっ?
 この顔……じゃないか。おれが探していたのは。

 今はほとんど化粧っ気がなくて地味に見えるけど、よく見ると整った骨格をしている。
 きちんとメイクをすればものすごく映える顔立ちだ。
 くせのないストレートの黒髪もいい。
 身長は160㎝ぐらいでバランスも上等。
 顔が小さく手足が長くてスレンダー。
 こっちも合格。

 もっとよく観察して、直観に間違いがないか確かめたかった。

 チラシを受け取って入口のほうに歩いていくと、後ろから「ありがとうございます」と明るい声がはじけた。
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