たとえ、この恋が罪だとしても
 固い木の椅子に腰をかけて待つこと15分。コンサート開始。

 お世辞にもうまいとは言えないコーラスだったが、そんなことはどうでもよかった。

 周りで見ている人たちもほとんど出演者の家族や友人のようで、おれの存在はかなり浮いていたが、そんなこともどうでもよかった。

 上手前列の端から二番目にその子はいた。

 緊張のせいで顔がこわばっていたが、歌いだしたとたん柔らかい表情に変わった。

 でも甘さだけでなく、一本筋の通った凛とした風情も漂っている。

 イメージにぴったりだ。
 頭のなかに次から次へとこれから取るべき写真の構図が浮かんでくる。
 
 見つけた。

 おれが探していたのはこの子だ。


 さて、どうやって口説き落とそうか。まずはスタジオに来させないと。

 おれは頭のなかで策をめぐらしていた。
< 26 / 182 >

この作品をシェア

pagetop