たとえ、この恋が罪だとしても
 その値段を聞いて理解した。あの人は決していい加減でもふざけていたわけでもなく、本気なんだ。

 わたしのどこがあの人の眼鏡にかなったのかはわからない。

 でも、あれだけ必死に頼んでくれたのだから、一度だけでもちゃんと話を聞かないと失礼かもしれない。

 理性的に考えれば、関わらないほうが無難だとわかっていた。

 でも、あんな勝手な態度を取られたのに、なぜかまったく嫌じゃなかった。

 むしろ、もう少し話していたかった。

 そう、本音を言えば……
 
 幻のようにあっという間にわたしの目の前から消え失せてしまった、美しい瞳のあの人に、もう一度会ってみたかった。

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