たとえ、この恋が罪だとしても
第6章 スタジオで
〈side Takito〉

「それで、まだ半分以上ローン残ってたのに、あの時計渡してきたってわけ?」
 紗加はあきれ顔で言った。

「いや、怖そうなおばちゃんが食ってかかってくるから、信じてもらうにはそのぐらいしなきゃと思って」

「あきれた。今ごろ、質屋の店頭に並んでたかもしれなかったわね。あなたの大事な〝オーシャンクロノグラフ〟」

「いや、そんな子じゃないからさ。えーと、文乃ちゃん、は」

「ずいぶん自信満々だこと」
「なんか、目を見てたら感じるもんがあったんだよ。ピピピって」

「まあ、でも結局、あなたの勘に狂いはなかったってことか」


 今日は土曜日。あの教会で文乃を見つけてから6日。

 昨日、待ちに待った電話がかかってきた。

 彼女は絶対来ると信じていた。
 何故だかわからないが自信があった。
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