たとえ、この恋が罪だとしても
 それにしても、安西さんは華のある人だ。
 彼がいるだけで周囲がぱっと明るくなる。

 雰囲気だけでなく、その容姿も人を惹きつけるのに充分なほど整っている。

 秀でた眉、くっきりした二重瞼、すっと通った鼻筋。形の良い唇。

 わたしなんかより、彼のほうがよっぽどモデル向きだ。

「おれの顔、なんかついてる?」
 また、まじまじと見つめてしまった。
 恥ずかしさで顔が赤くなる。

 でも彼は見られるのに慣れているみたいで、とくに気にする様子もなく、こっちだよ、とすぐに後ろを向いて歩きだした。

 建物は古い日本家屋で、表から見ると、まるで写真スタジオらしくなかったけれど、玄関から短い廊下を通ってふすま戸を開けると、中はまるで別世界だった。
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