たとえ、この恋が罪だとしても
「あの……これ」
「ちゃんと持ってきてくれたんだね。サンキュ。じつはまだローン払ってる最中だったから、本当言うと冷や汗もんだったんだ。戻ってこなかったらどうしようってね」

 この人、どうしてこんなに人を和ませる顔をするんだろう。
 旧知の友だちに見せるような笑顔。
 わたしたち、まだたった2回しか会ったことがないのに。

「でも、来てくれるってわかってたよ。なんでだろう? わかんないけど、きみが来ないはずないって思ってたよ」

「……こんな高価なもの預けられたら、来ない訳にいかないじゃないですか」

 彼はいたずらが成功した子供のように、目を輝かせた。

「じゃあ狙いは当たったんだ。なんとしてももう一度会いたかったんだ、きみに」

 まるで愛の告白のような言葉を口にしながらじっと見つめてくる。

 わたしは思わず視線を外して下を向いた。
 赤く上気してくる顔を隠したかった。
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