たとえ、この恋が罪だとしても
『急でごめん。年明けって言ってたけど、両親が年末から海外旅行に行くことになって、明日しか都合がつかないんだ』

「でも、明日は合唱のコンサートの打ち上げがあって――」

『そっか。でも、できたらこっちを優先してくれるとうれしいんだけど。結婚の話、年内に直接両親に伝えておきたいんだ』

「そうだね。うん。わかった。じゃあ合唱団の人に連絡しておくね」
『悪いね。じゃあ明日。11時ぐらいに迎えに行くから』

 ……これが神様からの返答だ。

「ちょっと試してみただけだ。お前が選ぶべき人はこっちだろう」と。

 プロポーズされたとき、わたしは俊一さんがこの世で一番好きだった。
 
 それが……こんなにもあっけなく、気持ちがぐらついてしまうなんて。
 突然、目の前に現れた人に一瞬で心を奪われてしまうなんて。

 やっぱりわたしはおかしい。
 安西さんにはこのまま、会わずにいるべきだ。

 わたしはテーブルの上に置いていた名刺を、引き出しの奥深くにしまい込んだ。
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