たとえ、この恋が罪だとしても
***

 待ち合わせの駅前に着くと、安西さんはすでに来ていた。

 あのときと同じ、豹柄のコートを着て。
 でも昼間の教会より夕暮れ時の雑踏のほうが断然似あっている。

「ごめんね。呼び出して」

 また、あの顔。
 人を従わせてしまうずるい顔。

 けれど、わたしはまったく嫌じゃなかった。
 それどころか言いようもなく嬉しかった。

 ふたたび安西さんに会えたことが。
 こうして話をできることが。

 どうしようもなく嬉しくて、どうしようもなく困惑していた。

 そんなわたしを安西さんはさらに惑わせた。

「これから2~3時間付きあってほしいんだけど? 一緒に行きたいところがあるんだ」

 断りなさい、断らないとだめと、心のなかで誰かが命じた。

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