たとえ、この恋が罪だとしても
 でも口から出たのはそれとはまったく正反対の言葉……。

 「……そのぐらいの時間なら」

 わたしを困らせているのは、神様じゃない。悪魔だ。今はっきりわかった。

 今日だけ。本当に今日だけだから。

 そう自分に言い訳をして、目の前に停まっているジープの扉を開けた。

 意外なほど座面が高くてもたついていると、安西さんはにっこり笑って運転席から左手を差し出した。

「……約束が違いますけど。断ってもいいって言ってましたよね」
 わたしは不満を装った。

「うーん、そうだよね。そうなんだけど、どうしてもきみの顔がチラついちゃって」

「でも、この間、写真を撮影していただいてよくわかりました。本当に無理なんです」

「自然にしてればいいだけなんだよ。カメラを意識しなければ」

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