たとえ、この恋が罪だとしても
「それが一番難しくて。それに……わたし、ついこの間プロポーズされたばかりなんです。年が明けたら、結婚の準備で忙しくなると思うので時間もないし」

「へえ、そう……なんだ。ふーん、どんな人、彼氏?」
「同じ会社のひとで……」

 そのとき、ちょうど信号が赤に変わった。

 安西さんは下を向いて唸っている。
 諦めてくれたのかな。

「うーん。時間は都合に合わせて調整できるよ。それにきみにはそんなに手間は取らせないようにするし。打ち合わせも入れて正味3日ぐらいでいけると思う。それでも、どうしても、だめ?」

「そう言われても……」

 話に気を取られて意識していなかったが、ふと外を見るともう街中から大分離れていた。
 わたしは少し不安になって尋ねた。

「いったいどこに行くんですか?」

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