たとえ、この恋が罪だとしても
「う、うん。飲むよ。よし、飲んでやる。約束破ったんだから」

 我慢できずに今度はわたしが吹き出した。

「嘘です。さっきの仕返し!」
「ああ、よかったー。えっ、じゃあ、承知してくれるの?」

「はい。もう乗りかかった舟です。その代わり、やっぱり素人に頼むんじゃなかったとか後で言わないでくださいね」

「文乃ちゃん、最高! ありがとう!」

 ぱっと目の前から星空も街の夜景も消えた。

 安西さんにぎゅっと抱きしめられていた。

 気づいたとき、爪先から頭のてっぺんに、一瞬で血が駆けのぼったように感じた。


 彼はただ感謝を表しただけ。
 単なるハグだ。

 それでも、わたしは、俊一さんに抱かれたときにも感じたことのない、目が眩むほどの高揚感でおかしくなってしまいそうだった。
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