たとえ、この恋が罪だとしても
 昨日はわたしの実家をふたりで尋ねた。

 うちの両親は、俊一さんのご両親以上にこの結婚に大賛成だった。

 食卓には見たこともない豪勢なおせち料理が並んでいて、それだけで母のはりきりが伝わってきた。

 そうやって、周りが祝福してくれればくれるほど、わたしの心には暗い影が差す。
 秘密を抱えている心苦しさにじわじわと蝕まれていく。

「お姉ちゃん、なんかヘンだよ? もうすぐ結婚するハッピーな女って感じがぜんぜん伝わってこないんだけど」
 ふたりきりになったとき、3歳年下の妹がこっそりささやいた。

 どきっとした。
 昔から妹は勘が鋭い。

「うーん。そうね。正直ちょっと不安もあるかな。結婚していきなり知らない土地に住むことになるし」
「ああ、マリッジ・ブルーってやつね」
 妹はわたしの話を鵜呑みにしたようだった。

 当たり前だ。まさか俊一さん以外の男の人を想って悩んでいるなんて、妹ですら思いもよらないだろう。
< 67 / 182 >

この作品をシェア

pagetop