たとえ、この恋が罪だとしても
 安西さんに会うのはあと3日か4日。
 この秘密を抱えるのはそれまで。

 それに安西さんとわたしの関係はあくまでもカメラマンと被写体。
 分別さえわきまえていれば大丈夫なはず。
 とにかくしっかりしなきゃと、自分をいましめた。

「聞いてた?」
「あっ、ごめんなさい。もう一回言ってくれる」

 考え事に気を取られていて、俊一さんの話を聞きのがしていた。

「来週の週末に、一緒に大阪に行ける? 社宅を見にいこうかと思ってるんだけど」

 週末には衣装合わせの予定が入っていた。

「えっと、今週の日曜日は合唱の仲間とコンサートを聞きに行く約束があって。次の週末でもいい?」

「最近、おれの予定に合わせてもらってばっかりだったもんな。いいよ、じゃ、来週にしよう」
「ありがとう」

 わたしはまたひとつ、嘘を重ねた。
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