たとえ、この恋が罪だとしても
「安西氏に押し切られたのかな? 彼、強引だからな」
「……ですね」

「実はぼくもそのくち。他の仕事で手一杯だったんだけど、彼にどうしてもって頼まれてさ。でも、今、きみに会って、がぜんやる気が湧いてきたよ。たしかに今回のコンセプトにぴったりの人だね」
「コンセプト?」

「ああ、聞いてないのかな? まあ後で、安西氏が話してくれると思うよ」

 上島さんは手に持っていた薄紅色のスカーフを黒いドレスに巻きつけながら、話を続けた。

「心配してるみたいだから教えてあげる。モデルの極意なんて、じつに単純なものだよ。自分が人形になったと思えばいいんだ」

「人形に?」思わず問い直していた。

 彼の言わんとすることがよく理解できなかった。

「人形浄瑠璃って観たことある?」

「えーと、文楽のことですか? 高校生のとき、学校の鑑賞会で見たのがそうかな」
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