たとえ、この恋が罪だとしても
「ぼくは好きでね。よく行くんだけど、ただの人形が人間以上に美しく妖艶に見える瞬間があるんだ。語りや人形遣いの力でね。モデルも同じ。衣装やメイクや撮影の力で、つまりぼくたちの力で一番美しく見えるようにしてあげるものなんだよ。結果の心配はぼくらにゆだねてくれればいい」

「はい……」

 素人のわたしがいくら下手な小細工をしたって無駄ってことかな。
 でもたしかにそうだ。
 いくら意識したところで、なんにもできない。

「さすが、いいこと言うなあ。そうそう、文乃ちゃんはただ、おれたちに身をゆだねてくれればいいんだよ、ね」

 安西さんが事務室での用事を済ませて、会話に割りこんできた。

 上島さんがくくっと喉をつまらせて笑った。

「安西氏が言うと、なんだかいやらしく聞こえるなあ」

「えっ? そんなことないよ、ねえ、文乃ちゃん」

「あら、わたしは上島氏に一票」
< 73 / 182 >

この作品をシェア

pagetop