たとえ、この恋が罪だとしても
***
各衣装それぞれをほんの10分ぐらいの短時間で撮影した。
無理に意識しなくても、すっかり着せ替え人形の気分だ。
撮影自体は二度目だったので、少しだけ慣れた。
安西さんの指示にできるだけ添えるように、それだけを気をつけた。
それでも右を向いてと言われて、左を向いてしまったり、長いドレスの裾につまづいて派手にこけたりと、いろいろやらかしてしまった。
安西さんはそんなわたしを見て、肩を震わせて笑いをこらえながら言った。
「文乃ちゃんって、見た目は、お姫様かと思うぐらい楚々とした風情なのに、けっこう間が抜けてるよな」
「えー、仕方ないですよ。慣れてないんだから」
「ま、そういうとこが可愛いんだけど」
「……」
この人のことだ。
深い意味はないはず。
ぜったい、モデルになら誰にでも言うんだ。
可愛いって言われたからって浮かれちゃだめ。
わたしは心のなかで一生懸命自分を説きふせていた。