たとえ、この恋が罪だとしても
 今度は額に手を当てられた。

 お願い、もう構わないで!

「大丈夫そうだね。じゃあ、撮影続けるよ」

 あんなふうに触れられてしまうと、安西さんにハグされた記憶が一瞬でよみがえってくる。

 朝、あんなに必死で築いた心の壁はあっけなく崩壊した。
 抑えつけていた分、さらに想いが募って苦しいほどだ。

 ほんの1メートルほどの距離にいる、カメラを構えている人にこの想いに気づいてほしい。

 でも気づかれたら本当は困るのだけど。

 わたしのなかで相反する気持ちがせわしなく交錯した。
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