たとえ、この恋が罪だとしても
「お疲れさま」

 濃紺のマニッシュなピンストライプのジャケットにタイトスカート。
 身体のラインにぴったり沿った服を憎らしいほどスマートに着こなしている。

 近藤紗加(さやか)はこのスタジオの共同経営者。

 いや、おれは写真を撮るしか能がないから、実質的には彼女一人で仕切っていると言ったほうが正解だろう。

 英語、フランス語ともに堪能で容姿端麗、頭脳明晰、非の打ちどころのない才女だ。
 年齢不詳。たぶん、三十代半ば、かな。
 
「首尾はどう?」
「ばっちり。もうIDも教えたし」

 ぱしっと頭をはたかれる。
「イテっ」
「そっちじゃなくて撮影のほうよ。順調に行けた?」
「ああ。里奈ちゃん、なかなか勘のいい子でさ。今日は楽勝だった」
< 8 / 182 >

この作品をシェア

pagetop