たとえ、この恋が罪だとしても
「安西があなたでなくてはだめ、と言うのだから自信を持ってくれればいいわ。それにやっぱりできません、なんて軽々しく言わないでね。一旦引き受けたからには責任を持ってくれないと困るわ。素人だろうがプロだろうが、そんなことは関係なくてよ」

 いつもよりもさらにきりっとした表情でそう言われた。

 安西さんにとって、そして紗加さんにとっても人生をかけるほどの大仕事なのだ。

 わたしにもちゃんと自覚を持ってほしいということだろう。

「わかっています。引き受けた以上は投げだすようなことはしません」

「ありがとう。それを聞いて安心したわ」

 時計に目をやると、もう7時をすぎていた。

 わたしはカバンとコートを手にとり、「帰ります。コーヒーごちそうさまでした」と告げて玄関に向かった。
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