たとえ、この恋が罪だとしても
 ……まったく、何から何まで抜け目のない女だ。これまでは紗加のそうした部分を、ある意味尊敬してきたし、頼ってもきたんだが。

 おれははじめて、紗加の冷酷さをわずらわしく思った。

 興ざめした顔で紗加は言った。

「たとえ好きな女でも踏み台にしてのし上がるぐらいの気概を持った男だと思ってたけど、勘違いだったのかしら? 頭を冷やしてわたしが言ったことをよく考えてみたら?」

 そう言いのこして、彼女は振りかえりもせずスタジオを立ちさった。

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