たとえ、この恋が罪だとしても
第10章 あなたが好き……
〈side Ayano〉

 どうやって自分の部屋までたどり着いたのか、まったく覚えていない。
 気づいたら、びしょぬれのまま、玄関に座りこんでいて、しばらく動けなかった。

 わたしは大まぬけだ。

 あのふたりの関係に、今日まで気づいていなかったなんて。

 安西さんへの自分の気持ちを処理するのに必死で、そこまで気が回っていなかった。

 考えてみたら当然のことだ。あれほど美しい女性と5年も仕事をしていて、そういう関係にならないほうがむしろおかしい。

 でもショックだったのはそれだけではない。

 ふたりの姿を見て、ある意味、安堵を覚えてもいいはずだった。

 紗加さんほどの美しい人が恋人なら、わたしの想いが報われる望みはほんのひとかけらもない。

 だから、この迷いから覚め、俊一さんの元に戻れるチャンスだった……はず。
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