さあ、離婚しましょう  始めましょう
「疲れた? そろそろ帰ろうか。送ってく」

「そうだね」

ほとんど見終わった私たちは、水族館を出てから江の島を見たり、食べ歩きをしたりと充実した日を過ごせた。
終始手をつないで、お互いの物を食べあったりと恋人同士のような、いや、付き合ったのだから恋人と言っていいのだろう。
自分で訳のわからない突っ込みを入れたりして、過ごしていた私だったが、帰ろうと言われて少し寂しくなる。

“送る”その単語が今日が終わることを告げている。

今までだったら、同じ家に帰れていたのに、恋人になったとたん違う場所に帰るなんて皮肉だ。
こんなことになるのなら、家も借りなかったし、もっと早くに好きだって言ってくれればよかったのに。
そんな気持ちが沸き上がるも、勝手に新居を契約してきたのも、言わさない雰囲気を出していたのは自分だ。
一番、臆病で卑怯なのは自分なのに、尋人のせいにしてしまった自分を反省する。

ため息をつきたい気持ちを押さえつつ、尋人の車に乗り込んだ。
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