さあ、離婚しましょう 始めましょう
「じゃあ、これ預けておくね」
立ち上がって、リビングの小さな引き出しを開けて、婚姻届と一緒のタイミングでもらっていた離婚届を見つめた後、私は呼吸を整えて尋人の前に差し出す。
「弥生……」
自分から言い出したのに、私がこんなに用意周到にしていたことに驚いたのかもしれない。
私の名前だけ書いてある離婚届を少しの間みた後、尋人はそれを受け取った。
「出しておく」
「お願い」
そっと差し出された尋人の右手。その手に私も右手を差し出す。お互いの右手と左手を繋げるような未来はなかったけど、こうして握手できる関係でこれからもいたい。
私はそう思った。