さあ、離婚しましょう  始めましょう
コインパーキングに止めるだけなので、数分もあれば尋人は来るはずだ。しかし、その間お茶を用意するとか、部屋を片付けるとか、何かできることはあるのに私は落ち着かずにうろうろしていた。

その時、部屋のインターフォンがなり私はパタパタと玄関へと走っていった。
「おかえりなさい」
一緒に住んでいた時の癖で、今まで一緒にいたにもかかわらずそんなことを言ってしまった私に、一瞬ポカンとした後尋人はふわりと笑った。
「ただいま?」
ポンと私の頭に触れた尋人が、靴を脱いで私の横をすり抜け家へと入っていく。尋人が触れた場所を私も触ると彼の後を追った。

「何か飲む? ごはん簡単に作ろうか?」

「車だし、お茶で」
はっきりと今日は帰ると意思表示をした尋人に、当たり前なのに私はなぜか少し寂しくなる。
さっきも誘ったのは私からだし、ただ断れなくて来ただけかもしれない。
お茶を入れる手が止まってしまった私に、尋人が驚いたように声をかける。
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