さあ、離婚しましょう  始めましょう

「だから、宗次郎君のことなんて好きだったことないって言ったじゃん」

「は?」
そこで尋人は今までとは違う反応をした。心底驚いた様子だ。
その意味は解らないが、お付き合いをすることを了承したのに、これ以上隠してもいいことなどない。


「自分に自信がないの。尋人に好きだって言ってもらえるようなところないし……。佐和子の失恋の傷をただ私で本当はごまかしてるのかなとか、いろいろ考えちゃって。付き合うって言ったのに今日だって帰るって言うし、必要以上に触れないし」
もう、一度あふれ出した言葉は止まらず、訳の分からない涙まで零れ落ちた。

「弥生……」
私の名前を吐息交じりに呟くと私の手を取りリビングに戻ると、ラグの上に座らせ自分も私の前に座った。
そして、私の瞳を覗きこむ。

「一つだけ確認していい?」

「うん」
私の頬を手で包み込み少し乱暴に目じりの涙を拭うと、尋人は少し間をおいて口を開いた。
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