さあ、離婚しましょう 始めましょう
「考えていたことは一緒か。今日は一人二つ食べられるな。でも弥生が三つ食べでもいいよ」
昔はどっちが食べるかよく言い合いになったのに、どこまでも甘やかす尋人。
「いい、一緒に食べたいから」
私だって尋人を思って買ってきたのだ。喜んで欲しいと伝えれば、尋人は「弥生、かわいすぎ」そういいって口元に手を当てている。
まさか照れてる?
私なんかでこんな表情が見られるなんて。驚きと嬉しさでぼんやりと見つめていれば、キュッと鼻を摘ままれた。
「あんま、見ないで。着替えてくる」
「ああ、うん」
自分の部屋に入っていった尋人の背中をしばらく見送ってしまったが、私はハッと意識を戻すとリビングへと戻った。
お酒は飲むだろうか?
冷蔵庫から飲み物を出そうとして、私は手を止めた。
うん、飲もう。
タクシーでも電車でも帰れるし、少し飲んだ方がリラックスする気がした。
冷蔵庫から大量に冷やしてあったビールとグラスを持って戻れば、尋人もちょうど席に座るところだった。
「俺の好きなチキン南蛮」
嬉しそうに言って料理に目を向ける彼に、私もホッとする。