さあ、離婚しましょう  始めましょう

酔いも手伝って私の顔はきっと真っ赤だと思う。

食器を洗う手を止めて手をタオルで拭くと、私は尋人に向き合った。

「弥生?」
どうしたのかと思ったのか、尋人が私の名前を呼んだ。少しかしこまってしまったが、私だって気持ちをきちんと伝えたい。
そう思って一気に口を開く。

「私だってすごく楽しみにしてたし、会いたかった」
最後はもう聞こえないぐらいになってしまったが、なんとか言葉にできてホッとしていると、いきなり頬をすくいあげられた。

「尋……」
その名前を最後まで呼ぶことはなく、唇がふさがれていた。

この間のような触れるだけの優しいキスでも、初めての時のただ激しいだけのキスとも違う。
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