さあ、離婚しましょう 始めましょう
その俺の問いに、弥生の頬が真っ赤になる。
『いい、やっぱり答えないで』
聞いてめちゃくちゃにするよりは、ふたりの初めては幸せな思い出にしたい。そう思って否定すると弥生は自分の手で顔を覆う。
『ごめん、やっぱり初めては面倒だよね? 本当にごめん』
『はあ?』
なぜか謝る彼女に俺は間抜けな声が出ると同時に、嬉しさと安堵がこみ上げる。
彼女に触れたのが俺が初めてだという安堵と、幸福感が溢れる。
それと同時に大切にしなければ。そんな思いも頭を過る。
でも、いまここでやめられるか? 自問自答するもすぐに頭の中で答えが出る。無理。
こんなかわいい姿を見せられ、弥生も覚悟してくれているのに、ここでやめるななんて弥生を傷つけるだけだ。
そう自分の感情を正当化した。
俺にできることは、ただ甘やかして、少しでも弥生の初めてを幸せな記憶にすること。
『絶対に俺以外にそんなかわいい顔見せないで。ずっと大切にするから』
精一杯の言葉を伝えれば、弥生は驚いた表情をした後、俺の好きな柔らかな笑顔で頷いてくれた。