さあ、離婚しましょう  始めましょう

※※

「弥生、おはよう」
電車を降り会社に向かっていた私は、その声に振り返った。そこには笑顔の佐和子がいた。

「おはよう、おつかれさま」
しばらく出張や外出が続いていた佐和子。こうして面と向かって顔を合わすのは久しぶりな気がした。

「最近本当に忙しかった」
綺麗な顔を少し歪めながら佐和子はいうと、小さくため息をついた。そして視線を前に向けると、何かに気づいたように指さす。

「あれ尋人じゃない? それに宗次郎……」
私も数メートル先に歩いている尋人に気づいていたが、なんとなく会社で声がかけづらく後ろを歩いていた。

「二人ともおはよう」
しかし、佐和子は小走りで走っていくと、声をかけた。その佐和子の呼び声に尋人たちも振り返ると。
「珍しいな。一緒になるの」
尋人が答えれば佐和子は宗次郎君を見ることなく、尋人だけを見て笑顔で答える。
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