さあ、離婚しましょう 始めましょう
単刀直入に言った私に、宗次郎は驚いたような表情をしたあと、いつも通りの冷静な声を発した。
『どうして?』
その時私はなんて答えたのだろう。最後には宗次郎は「わかった」それだけを言って伝票を持って席を立ったのがわかった。
「俺は結婚したい」「好きだよ」その言葉さえ聞ければ安心できたのに。
極めつけはこの間の弥生たちとの会話。
『何を考えているのかわからない』
「そうだよね……。こんな可愛げのない女……」
ポタリポタリとデスクの上の資料の色が変わっていく。今更泣いたって、自分で取り返しのつかないことをしたのに。
「宗次郎……」
誰もいない部屋で私はもう戻らない彼の名前を呼んだ。