さあ、離婚しましょう  始めましょう
「なに?」

宗次郎の声を聞きたいから、幻聴が聞こえるようになったのか。
そんなことを思いながら、私は机に顔を埋めたまま口を開く。

「宗次郎はかわいい女の子がよくなったんだよね。弥生みたいな。私なんか素直じゃないし、強引だし、男勝りだし……」
自分で言っておいて自嘲気味な笑みが浮かぶ。泣いているのか、笑っているのか自分でもわからない。

「どうしてそうなるんだ? 佐和子が俺のことが嫌になったんだろ?」
今度ははっきりと聞こえたその声に、私は驚いて顔を上げて立ち上がった。
その反動で私は完全にバランスを崩してしまう。

「佐和子!」
鋭い声と同時に力強い腕に引き寄せられる。そのまま二人でバランスを崩して床に倒れこんだ。
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