さあ、離婚しましょう  始めましょう

「痛……っ」
「ごめん!」

私の下から聞こえた宗次郎の声に、ハッとして宗次郎の上で身体を起こした。私はどこも痛いところはなく、完全に宗次郎に守られたことを知る。
宗次郎も身体を起こすと、壁にもたれかかり小さく息を吐いた。

「佐和子、痛いところは?」
どこまでも優しい宗次郎。その問いにフルフルと頭を振って否定する。

「ごめんなさい……」
流れる涙を自分で乱暴に拭うと、宗次郎から離れようとすればそのまま引き寄せられた。

「え……」
久しぶりに抱きしめられたその腕は温かくて、やっぱり好きだと実感してしまう。

「さっきのどういうこと?」
抱きしめられていて宗次郎の表情はわからないし、その声音からも何を考えているのかわからない。
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