さあ、離婚しましょう  始めましょう

「尋人、あの色気に入ってなかったもんね。私が勝っちゃったから」
確かにモノトーンの多い尋人の家にはブラックの方が合っていたが、どうしても私は座った時の感触が好きだった今のソファを譲らなかった。

「そうだったな。でも今では気に入ってるよ。二人で座ってもゆったりしてるし、寝心地もいいし」
懐かしむように言った彼の言葉に、嫌でも記憶がよみがえる。休日に映画を見たり、夜はお酒を飲んでそのままソファで寝落ちしたりした。
たくさん言い合いもしたけど、それ以上に楽しい時間の方が多かった。
元々、人見知りで社交性の高くない私が、こんなにも心を開いて落ち着くのは彼だけだった。

でも、それは私の一方的な思いだ。妹のように可愛がってくれているのを、嫌と言うほどこの一年で知った。
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