さあ、離婚しましょう 始めましょう
そこまで思って、その考えが間違ってることに気づく。
佐和子と宗次郎だって数カ月後に結婚式を控えているのだ。今更尋人が独身になろうが関係がない。
「だって、友達に離婚したこと伝えないとかないかなって……」
本音を言えば、誰かに話さなければ、このままもう少し続けたい。そんな言葉を発してしまいそうで怖かった。そんな理由を尋人には言えなかった。
「参ったな……」
珍しくかなり困ったような表情を見て、尋人自信、独身になって枷がなくなったら佐和子への思いが強くなってしまうことを危惧しているのだろうか。
キュッと唇を噛んで、尋人の苦しい気持ちを佐和子を呼んだことで呼び覚ましてしまったことに申し訳なくなる。
「ごめん、勝手に」
謝罪をしたところでもう一度インターフォンが鳴った。
「行ってくる」
それだけを言うと、尋人が私の手を離した。大好きな人の温もりがなくなってしまったことを寂しく思うなんて。
情けない自分を叱咤すると、玄関の扉を開けた。