さあ、離婚しましょう  始めましょう

リビングに行けば、窓の外を立ったまま見ている尋人の姿が見えた。
先ほどの感じだと、私が勝手に話したことに怒っているようだった。確かに気まずい雰囲気なのは本当だ。
「尋人」
佐和子の静かな声に、尋人がゆっくりと振り返る。

「なんだ?」
特に話す気がないのか、気のない返事をする尋人。
私に怒っているのか、佐和子と会うのが気まずいのかわからない。

「あっ、引っ越し屋さんくるまでにあと一時間ぐらいだけど、もう準備も終わってるの。佐和子お茶でも入れる」
この空気にしたのは自分なのに、居たたまれない気持ちで言うと私はキッチンへと向かう。
「いい、弥生。俺が入れる」
「でも」
そんな言い合いをキッチンでしている私たちに、佐和子がジッと私たちを見ていることに気づく。

「ねえ、なんで離婚するのよ。尋人、浮気でもしたの?」
まさかそんなことを思っているとは思わず、私は慌てて佐和子に視線を向ける。

「違う、尋人は悪くないの」

「じゃあ、なに? 弥生に好きな人でも……?」
少し言いずらそうに言う佐和子に、なんと答えていいかわからない。

「佐和子、これは俺たち二人の問題だ。関係ない」

「そんな言い方ないでしょ? 尋人、私は心配してるのよ」

「心配されたくないんだよ」
佐和子の少し大きな声に、尋人はほとんど佐和子に聞こえないぐらいの声でそう呟いた。


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