さあ、離婚しましょう  始めましょう

「ねえ、さっきの話だけど」
何かをしながらの方が聞きやすい気がして、手を動かしながら佐和子に声をかけた。

「どうして急に延期なんて?」
私の問いに比較的いつもサバサバとこたえる彼女が、考えるように手を止めた。


「どうしてかな。マリッジブルー? なんかこのままでいいのかなって」
「宗次郎君はなんて?」
そこで佐和子はまた少し口を閉ざす。
「宗次郎は……。私が決めたことには何も言わないから」
少し寂し気に言った佐和子の気持ちがなんとなく分かった気がする。

宗次郎君は温和でとても優しい。相手のことをよく見ていて、波風を立てることのない人だ。
知り合ってかなりの年数が経つが、怒ったところなど見たことがなかった。
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