さあ、離婚しましょう  始めましょう

「尋人の浮気でもないんでしょ? 弥生に好きな人ができたわけでもない。離婚する理由なんてあるの?」

「まあ、いろいろあるじゃない。それこそ付き合わずに結婚しちゃったから、一緒に住んでみて世間一般に言うところの価値観の相違? 友達の時と結婚は違うでしょ?」
最後疑問形になってしまったのは仕方がない。そんなものではないし、初めから離婚は決まっていたのだ。むしろ尋人との同居はとてもスムーズだった。お互いの足りないところを補填しあえる良きパートナーだったと思う。

「価値観の相違ね……」
佐和子はもう一度繰り返す。

「別に不仲になったとかじゃないからこれからも気にしないで」
私の言ったその言葉を聞いて考えていたのか、佐和子は何かを思い出したように話し出した。
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